ようこそ日本アジアカワウソ保全協会へ

カワウソ

カワウソとは?

カワウソは食肉目イタチ科の動物で、世界にラッコなどを含む13種が生息していますが、そのほとんどが過去の毛皮を目的とした乱獲、生息地の破壊、水質汚染などにより絶滅の危機に瀕しています。

日本から永遠に消えたカワウソ

そのうち日本では一般的にはニホンカワウソと呼ばれるカワウソが北海道から九州にかけ日本全土に広く生息していました。しかし、明治時代に入り狩猟が開放されるようになると、その上質な毛皮と薬としての需要から乱獲が起こるようになりました。その結果、第二次世界大戦後の1950年代にはすでに北海道・本州ではカワウソはほとんど見られなくなっており、四国を中心に生き残ったカワウソも、高度経済成長期の環境破壊・汚染・漁業や土木工事との対立により1979年の目撃を最後に姿を消し、2012年環境省から正式に絶滅が発表されました。

帰ってきた?カワウソ 対馬のいま

このように過去人間の身勝手な行いによりカワウソを永遠に失ってしまった日本ですが、2017年長崎県対馬においてカワウソが生息していることが確認されました。環境省が実施したDNA調査の結果、少なくともオス・メス各2頭、計4頭の韓国由来とみられるユーラシアカワウソが生息していることが明らかになりました。

実は対馬には昔全くカワウソがいなかったわけではなく、その存在は江戸時代の「対州并田代産物記録(諸国産物帳の対馬国分の現存するもの)」「津島紀事」に記録されています。しかし、その後現在に至るまで記録がなく、その経緯については謎のままです。また対馬は韓国と約50キロと日本よりも近く、昔生息していたカワウソは元々韓国と遺伝的に近い個体群であった可能性もあります。しかし、いずれにせよ日本に再びカワウソが戻ってきてくれたという事実には変わりなく、保全の重要性が高まっています。

コツメカワウソのペット取引・飼育問題

最後にみなさんにぜひ知って頂きたいのが、現在日本で巻き起こっている空前絶後のカワウソブームにより深刻化するカワウソのペット飼育および違法取引の問題です。一口にカワウソといっても、ペット飼育目的で取引されているのは主にカワウソ13種のうち最も小型で、東南アジア原産のコツメカワウソです。

愛くるしい表情から自宅で飼育したくなるものと思われますが、コツメカワウソは魚の骨やカニの甲羅を割れるほどの強力な顎と歯を持ち、糞便には強烈な臭いを伴い、1年中暖かい温度と水生環境が必要となることから、個人飼育には全く適していません。そして何より群れで広い範囲を行動する動物であるため、狭い空間で少数で飼うことはカワウソに大きな精神的苦痛をもたらします。

さらにこの日本でのペット需要により原産国であるインドネシアやタイから多くの幼獣が密輸されており、まさに他国のカワウソをも絶滅させかねない状況となっています。

カワウソを守るには

日本にはかつて、固有種のカワウソが生息していましたが、我々人間の行いにより永遠にその姿を失うこととなってしまいました。また現在はペット飼育の需要により、他国のカワウソまでをも絶滅の危機に追いやる事態になっています。

二度と、カワウソを失わないようにするためには、どうしたらよいのでしょうか?まずは現状を把握するために、現地での定期的な調査・ヒアリングが必要になります。そして、状況に応じて環境改善や時には開発工事に配慮を要請することもあります。また違法取引・ペット問題では現地のパトロール、不適切な売買・飼育を行う施設の調査が必要とされます。 さらになにより、こういった問題を正しく、広くみなさんに知っていただくためにSNS等を利用したり、動物園等の外部機関と連携した情報発信が欠かせません。

日本には過去40年以上も前にカワウソが絶滅してしまったため、専門家が数名しかおりません。もちろん、これらの活動を我々の力だけで継続していくことは非常に難しい状況です。 二度と日本や、アジア、そして世界のカワウソを失うという「悲劇」を繰り返さないためにも、みなさんの協力が必要です。どうか、我々に力を貸してください!共に、カワウソを守り、世界の野生動物と人間が共存できる明日をつくりましょう!

(事務局長 岡元 友実子)

協会の使命

調査・研究
Research

現地でのカワウソ生息地調査 / コツメカワウソの密輸・ペット取引調査

普及啓発
Education

カワウソ保全を啓蒙するワークショップの開催 / SNSを通じた情報発信

国際学術交流
Global Interaction

世界中のカワウソ研究者との情報交換・交流

理事長からの挨拶

Avatar

学歴

  • 学士 (農学), 1981

    東京農工大学

  • 博士 (理学), 1994

    九州大学

「カワウソを守るために」我々ができることをする

日本アジアカワウソ保全協会は、アジアを中心とする世界のカワウソ保全を目的とし、研究、普及啓発、そして世界のカワウソ研究者たちとの協力をより積極的に行うため設立されました。

近年、日本ではカワウソに関して大きな動きがあり、対馬におけるユーラシアカワウソの発見という喜ばしい出来事があった一方、東南アジアから輸入したコツメカワウソのペット飼育、カワウソカフェの増加など、いわゆる「カワウソブーム」とも呼べる社会現象がみられます。そして、残念なことに、その需要に目をつけた密輸事件も多くなりました。

日本列島のカワウソはすでに1979年の目撃を最後に姿を消し、環境省から正式に絶滅が宣言されています。このような悲劇を二度と繰り返さぬよう、国内外のカワウソを守り、そして、その重要性をみなさんに伝えていくために、日本のカワウソ研究者たちが中心になってこの協会を設立しました。 カワウソにばかされているかも知れない我々に、何をどこまでできるのかは分かりません。しかし、地球全体の環境悪化が進み、未曾有の大量絶滅が起きている今、できる限りの行動を起こさねばカワウソだけでなく多くの生命が失われ、やがて我々人類自身にも影響が及ぶでしょう。次世代のため、カワウソと人類が共生する明るい未来を我々と共に創りましょう!

佐々木浩のサイン

IUCNカワウソ専門家グループ議長からの応援メッセージ

Avatar

学歴

  • 学士, 1962

    University of Caen, France

  • 修士, 1968

    University of Paris (Cuvier), France

  • 博士, 1981

    University of Paris (Orsay), France

日本のカワウソ保全を応援します

日本の皆さん、こんにちは!IUCN-SSC(国際自然保護連合 種の保存委員会)カワウソ専門家グループの議長、ニコル•ドゥプレです。私は1974年にIUCNのカワウソ専門家グループを設立し、世界のカワウソ13種の保全のため邁進して来ました。今日では世界中の345名の会員たちが、保全の重要性とカワウソにとって何が必要か伝えるべく活動しています。

日本は、かつてカワウソの固有亜種が生息していましたが既に絶滅してしまい、二度と戻ってくることはありません。近年、海外由来と考えられるものの、長崎県対馬でカワウソが再発見され、日本で再びその保全が大変重要な課題となっています。本来、カワウソはとても適応能力の高い動物で、適切な保護の下、きれいな川と餌となる魚がいれば十分に生存できる動物です。

他の世界の例を挙げると、近年大都会であるシンガポールにもカワウソが自然に復帰し、現在では大勢の市民が見守る中カワウソの家族が公園を横切り、あちこちの餌場を行き来する姿が見られています。イギリスも1970年代に絶滅の危機に瀕したものの、保全の努力により個体数が回復し、現在は各地で確認されています。また環太平洋に広く生息し、同じくカワウソの仲間であるラッコも1900年代には絶滅が危ぶまれましたが、積極的保護活動により特に北アメリカでは個体数が大きく増加しました。

このように努力次第でカワウソと人間の共存は十分に可能ですが、依然世界中で絶滅の危機にさらされていることには違いなく、湿地の縮小や漁民との衝突があれば、カワウソの個体数は簡単に減ってしまいます。またその他にも様々な脅威があり、例えば現在急激に経済発展を遂げている中国などでは富裕層にカワウソの毛皮製品に対する大きな需要があり、乱獲が懸念されます。一般的に国や都市の繁栄が進めば、野生動物はすみかを追われることになるのです。

カワウソは大変カリスマ性のある魅力的な動物で、特にその赤ちゃんはとても可愛らしい容姿をしています。そのため近年の日本では、”カワウソカフェ”などの商業施設が増えており、目にしたことがある方も多いかと思います。一見何の害もなく楽しそうに見えますが、こうしたペットとしての需要は、東南アジアに生息する野生のカワウソの多くを死に追いやる可能性があります。なぜなら、通常数頭の赤ちゃんカワウソを捕まえてインターネット上で売るために、他の大人のカワウソが時には全頭、10頭以上も殺されることがあるからです。またこのようにして捕まえられたカワウソたちの多くが日本に密輸され、その大部分が不適切な環境により輸送中に死亡してしまいます。この問題も、早急に解決が求められます。どうか、我々に力を貸してください!

皆さんの情熱と協力無しでは、カワウソの保全活動は成功させることができません。そのため、より全員が一丸となり活動に取り組むため、この協会が設立されました。そして、カワウソと地球のより良い未来のため我々はこれらの努力を確実に啓蒙していかなければなりません。日本アジアカワウソ保全協会の成功を、応援しています!

応援メッセージ原文(英語) Hello, everyone! I am Dr. Nicole Duplaix, who founded the IUCN Otter Specialist group in 1974, shared my passion for the conservation of the thirteen species of otters spread around the world. Today there are 345 members of this group to help spread the conservation message and to learn more about what otters need to survive.

Japan lost its very own otter subspecies. It became extinct recently. It will not return. ecently, otters from a foreign country were found in Tsushima, Nagasaki, its conservation is getting more important. Yet otters are incredibly resilient animals. Give them protection and healthy rivers with fish, and they will survive. We have seen this happen in huge cities like Singapore where otter family groups parade through the parks from one fishing spot to another, surrounded by people. We have watched their return to the United Kingdom where otters were scarce in the 1970s, but now live in every county. We witnessed the return of sea otters to the Pacific Rim, from the brink of extinction in the 1900s to large populations living along the coast of North America. Yet otter populations everywhere remain fragile and at risk. When wetlands shrink and fisheries dwindle conflicts arise between people and otters, and the otters lose. Threats take many forms. For instance, China’s new wealth spurs the illegal trade in precious furs and curios, otters included. As countries prosper and urban areas seemingly appear overnight, the wildlife departs.

Otters are charismatic and people often say otter cubs are so cute. Today, in Japan, you can see otters in otter cafes. This may seem harmless and fun but it is decimating the wild otter populations in Southeast Asia. A whole family of 10 otters or more are killed to catch a few otter cubs and sell them via the internet. They are then smuggled into Japan and many die along the way. This problem also should be solved as soon as possible. Please help us stop this!

Without your enthusiasm and support, we will not succeed. We know what needs to be done, we have launched conservation programs before and the otters returned to their former haunts, but we must expand these efforts significantly if we are to ensure that otters have a secure future in Asia and on the planet. Wish the succeed of this society, cheers!

ニコル・デュプレのサイン

メンバー一覧

  • 理事会
    • 理事長: 佐々木浩(筑紫女学園大学/IUCNカワウソ専門家グループ)
    • 理事: 大西信弘(京都先端科学大学/IUCNカワウソ専門家グループ)
    • 理事: 和久大介(東京農業大学/IUCNカワウソ専門家グループ)
    • 理事: キムヒョンジン(株式会社地域環境計画/IUCNカワウソ専門家グループ)
  • 監事
    • 監事: 中木原舞(株式会社地域環境計画)
  • 事務局
    • 事務局長: 岡元友実子(台湾新竹市立動物園/IUCNカワウソ専門家グループ)
    • 事務局員: 小口祐斗(京都大学)
    • 事務局員: 岡田その(東京大学)
  • 顧問
    • 北出智美(TRAFFIC JAPAN)
    • 村田浩一(日本大学生物資源科学部)